ハンガリー史・秋山晋吾のブログ

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zoom RSS ヘブライ文字史料との出会い・・・

<<   作成日時 : 2018/07/29 01:19   >>

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ここ数年、ブダペシュトのハンガリー国立文書館での史料調査では、18世紀のハンガリーにやってきた異郷出身の放浪者の記録を漁っている。
 実質2日半しかなかった今回の調査だが、1750-70年代の史料を7箱分、2,500枚くらいのデジタル撮影ができたので、まずまずの成果
 9時から17時までたちっぱなしでシャッターを押すのはきついのだが・・・。

様々な土地からハンガリーにさまよってきた何十人もの人たちの聴取記録を読むのはとても愉しい。

1761年にデブレツェンで捕まって取り調べをうけたムラドという名のアルメニア人は、オスマン帝国の「バビロニア」の出身のローマ・カトリックだと言う。

聴取官:いつバビロニアを発ったんだ?
ムラド:11年か12年前だと思います。
聴取官:どこをうろついてたんだ?
ムラド:だいたいはオスマン帝国にいたんですけど、数年前にポーランドに行ったんです。そのあと、トランシルヴァニアに行きました。
聴取官:ポーランドで何をしてたんだ?
ムラド:リヴィウのアルメニア司教に会って、トランシルヴァニアに行くための書付をもらったんです。
聴取官:どこに行っても物乞いしてまわってたようだが、なんでだ?
ムラド:親類がタタール人の奴隷になっていて、彼らを買い戻すために物乞いしているんです。あと200フローリン足りないんで・・・。
聴取官:ところで、おまえはヴェネツィアとローマにも行ったことがあるのか?
ムラド:いいえ、ありません。
聴取官:じゃあ、なんでローマで発行された書付を持っているんだ?
ムラド:トランシルヴァニアのアルメニア司教様にもらったんです。行った先で懺悔したくなったら見せればいいぞ、って。
聴取官:この書付に書いてある名前は、おまえの名前じゃないじゃないか! 他人の名前が書いてあるぞ!
ムラド:そんなこと言われても・・。いただいたものなんで・・・。
聴取官:盗んだんじゃないのか!?
ムラド:いいえェ。
聴取官:じゃあ、なんで服に縫い込んでいたりしたんだ!?
ムラド:そりゃ、めったに使うようなもんじゃないですからね。荷物とは別にしてたんですよ。

こんなやり取りが繰り広げられる。

残念ながら、ここで問いただされているムラドがもっていた「書付」は文書箱のなかには残されていない。
 ただ、別の放浪者たちが所持していたものは、当局に没収されたのだろう、しばしば文書に添えられている。
 こうした書付(身元保証書や通行証)は、放浪者たちのさまざまな出身地や経由地を反映して、さまざまな形式、さまざまな言語で書かれている。

放浪者に対する聴取の記録や報告書類は、近世ハンガリーの文書であるから、ラテン語かハンガリー語、たまにドイツ語で書かれているのだが、没収された書付類は、イタリア語だったり、フランス語だったり、キリル文字のルーマニア語だったり、アラビア文字のオスマン語だったりすることもある。
 こんな魅力的な資料が目の前にあるのだから、けっして語学好きでも、ましてや語学センスに恵まれているわけでも一切ない僕でも、40代半ばすぎても語学の勉強に駆り立てられることになる。いや、たいへんだ・・・・。

とはいえ、いずれも曲者の近世文書のこと。ぜんぶ独力でやるわけにはいかない。
 オスマン語の文書が紛れ込んでいたら、「そのうち東洋史の知りあいに読んでもらおう!」ってつぶやいて、後日頼みやすいように、できるだけ丁寧に撮影しておく。
 そんな他力本願でも、その文書が何語で書かれているかわからないと頼むにも頼めない。そこは、経験と努力、あるのみである。

で、今回はじめてヘブライ文字の文書に出くわした。
 ユダヤ人についての史料はこれまでにそれなりに見てきているので、今まで会ってないほうが不思議なのだが、いずれにせよ初体験。

ラテン語で書かれた聴取記録によれば、ベルリン出身の58歳のラビの所持品だった。
 16歳でベルリンを発って、パリからスペイン、イスタンブルをめぐって、ポーランド経由でハンガリーにやって来たと語っている。
 いやはや魅力的な経歴である。
 聴取記録自体は短く情報が少ないのだが、所持品の書付類をこまかく分析すれば、彼の40年余りの放浪をもう少し肉付けできるかもしれない。

ということで、ワクワクしながらデジカメで文書や書付を撮影していったのだが、そこでつまづいた。

このヘブライ文字文書、どっちが上でどっちが下かがわからない・・・・
 いや、正確に言えば、僕の乏しい知識では、これがヘブライ文字だということはわかるのだが、ヘブライ文字のアルファベットをまったく勉強したことがないので、どっち向きで写真をとれば正しいのかがわからないのだ・・・・。
 しかも、これがヘブライ語なのか、イディッシュ語なのかも、もちろんわからない。

ああ情けない・・・。

「上下が逆でも、パソコン上で回転させればいいだけだし・・・、専門家を探して読んでもらえばいいだけだし・・・」
さっきのハイテンションはどこへやら、ぶつぶつ言い訳しながらシャッターを押すことになった。

ヘブライ語、勉強します・・・・・。

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