剽窃・大学・大統領

シュミット・パールは辞めないそうだ。

自分の名誉のためでも、国の名誉のためでもなんでも理由はいいが、彼がハンガリー共和国大統領を辞任するまでの間、この国は、博士論文を剽窃した人物を元首とし続けることになってしまう。

事の発端は今年1月に、ハンガリーのニュース週刊誌hvgで報道された疑惑。
記事には、シュミット大統領が1992年にブダペシュトの体育大学(現在ゼンメルヴァイス医科大学に吸収)に提出した学位論文の大半が、1987年にフランス語で発表されたブルガリア人学者の研究をほぼそのまま翻訳したものだと書かれていた。http://hvg.hu/itthon/20120111_Schmitt_doktori_disszertacio_plagium
その後、さらにドイツ人学者の英語文献からのコピーも見つかった。
シュミット氏は疑惑を否定した。

おととい(3月27日)、大学の調査委員会の報告書が発表された。http://mediasarok.sote.hu/15877/kozlemeny-2012-03-27/

ぎょっとした。

報告書は、論文の内容について、

 ・シュミット氏の学位論文は、(全215ページのうち)17ページがドイツ人研究者の著作の完全な翻訳コピー、180ページ分がブルガリア人研究者の著作の部分的なコピー、文中の7つの表もコピー。
 ・論文には参考文献一覧は付されているが、文中に引用注がいっさいつけられておらず、引用符もない。また、ドイツ人研究者の著作は、文献一覧にも挙げられていない。

ということを確認する。
つまり、この論文は剽窃であるとしか読めないのだが、報告書の結論は違った。

曰く、
「本論文に散見される非学術的な資料の用い方、学術的な引用注・参照注の欠如は、指導教員あるいは論文審査員が、論文作成時あるいは予備審査時に指摘すべきことであり、それゆえ、形式上の誤りではあるが、違反行為ではない。」
ゆえに、
「当該の学位論文は、上述のような手続き上のミスは見られるが、形式上は当時の体育大学の慣例に照らして適切である。・・・・体育大学が〔論文上の〕文章の一致を適切に発見することを怠ったため、論文筆者〔シュミット氏〕はこの論文が審査基準に合致するものと信ずるにいたったのである。」

学位請求者も腐っていれば、大学も腐っている。
注も付けられていない論文を提出する者も、それを受理して学位を授与する20年前の大学も、それを適切だったと結論する20年後の大学も。
大学は1992年と2012年と2回にもわたって醜態をさらしているのだ。
この報告書を受けて、シュミット氏も、シュミット氏を大統領に推した与党フィデスも、KDNPも、これでみそぎが済んだと発言している。

呆れはてるとはこのことだ。
曲がりなりにもハンガリーのことを研究し、大学で講義し、論文を審査する者として、感じるのは怒りでしかない。
ハンガリーに怒って、魅かれて、憑かれて、憂えて、呆れて、それらを一巡すると、また怒りに戻ってくるようだ。

センメルヴァイスの学生たちはシュミット氏からの学位剥奪を要求して座り込みをしている。
左派の新聞Népszabadságだけでなく、右派与党系の新聞Magyar Nemzetさえも、社説で大統領の辞任を求めている。
それだけが救いだ。
http://mno.hu/vezercikk/elnok-ur-gondolja-at-1064292
http://nol.hu/belfold/20120328-tolvaj


〔追記〕
怒りにまかせてここまで書いていたら、センメルヴァイス大学の学長が、シュミット氏からの学位剥奪を理事会に対いて発議したという発表があった。
ハンガリーの大学の良識が、首の皮一枚つながっていたということか・・・。
http://semmelweis-egyetem.hu/hirek/2012/03/29/a-doktori-tanacs-schmitt-pal-kisdoktori-cimenek-visszavonasat-inditvanyozza-a-szenatusnak/

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